私の名前はテント14(フォーティーン)。
ソクラテス武闘派と呼ばれることもある。前の巻ではジャッカルと言っていたが、ラグビーのジャッカルがスティール(窃盗)という名称に変更になったと聞いて、FIFAに抗議の意思を伝えるため名前を変えた。ジャッカルは、劣勢を強いられて来た弱者にとっての大逆転の技術であり、独裁者への反逆、抵抗の旗印でもある。
テントは、世界を変えようとする志士達の総本山、正義の奇兵である。時には刀を抜いて悪を斬る。貧困に苦しむ子供達を救い、世界を変えるリーダーを育成している(TBS日曜劇場『VIVANT』見よ!)。
※参考:VIVANT公式サイト(https://www.tbs.co.jp/VIVANT_tbs/)
ソクラテスは、無知の知を説き、対話による解決をリードした哲学者、人釣り人蕩しの先駆者である。
訳あって、私は北アルプスの森の中で一人で暮らしている。鶯の啼き声で目を覚まし、アルプスの美味しい水と空気で魂を清め、温泉で疲れた身体を癒しながら、どうやったら世界の終わりを回避できるか瞑想している。時に、キャンバスに意味不明な文字や絵を書き殴り、まるで狂ったゴッホがモナリザを追いかけているようなラジカルな日々を送っている。酒は一滴も飲まない。年齢は55歳。前の巻では53歳だったが、55歳になった。エネルギッシュで半端ないパワーなので、イスカンダルの預言者が、少なくともあと500年は生きるだろうと言っているらしい。
私の仕事は奉仕と人蕩し。奉仕と人蕩しに生命を掛けている。しかし、世の中には、人殺しを何とも思わない狂った独裁者がいる。人間として貧しく、自分の利益しか考えない最低の人種である。独裁か奉仕か!人類が誕生して今日まで、飢餓、貧困、人種、民族、宗教の対立と分断は、切れ目なく続き、解決の糸口が見当たらないように見える。縦の糸、横の糸をどのように編み合わせれば未来が来るのか。種の生存の秘密の鍵を探すことが、私に求められているサイエンスである。
私は、今年に入って手作りの核シェルターを作り始めた。2人分のスペースしかないが、1年分の水、食料、酸素、ペロブスカイト太陽電池と蓄電池を組み合わせた永久電源、エアコン、カセットグリル、最強空気清浄機(エアドッグ)、水素吸入器(KENCOS)、パルスオキシメーター、それにDAMのBGM付カラオケも入れた。もともと付いている温泉とも接続し、総ヒノキの温泉風呂も完成した。ここに放射性物質除去装置・ALPSを設置すれば世界最強の核シェルターが完成する。
2022年のロシアのウクライナ軍事進攻から4年半、AIとドローンが戦争戦略に革命を起こした。ドローン大量発射、極超音速ミサイルによるピンポイント斬首、兵隊ロボット、AI無人戦車、長距離原子力魚雷が戦局を一挙に逆転する。ここに核兵器が使われたら人類は瞬時に絶滅する。
終末時計も史上最悪の1分25秒前を指している。終末時計はこの世の終わりまでの残り時間を象徴的に示す指標で、アメリカの原子力科学者が毎年公表している。カウントが始まった第二次大戦直後の1947年には7分前であったものが、冷戦が終結した1991年には、冷戦が終わって平和な時代が来るという気運が醸成され17分前に巻き戻った。しかし、2026年現在の終末時計は、一挙に15分以上も進んで、1分25秒前という最悪の数値を示している。冷戦終結直後の13倍も終末が近くなったことになる。人類を救うことが出来るのは人間にしか出来ない。この数値から何を読み取るべきなのか、時間は限られている。(末尾に年表を添付する)
私は自由に空を飛べなかった時代を経験している。前巻の未完の自伝のタイトルが「この空を飛べたら」としたのは、こうした事情が絡んでいる。その私が1989年に、この世に帰還した。空を飛べなかった鳥が、どこにでも自由に飛んでいける、当たり前の世界に舞い戻ったのである。鎖を外された歓びは、鎖を掛けられたことのない人には分からないだろう。山を駆け、海に潜り、陸を走り、居酒屋で弾け、空を翔び、世界中を駆け回った。
帰還した1989年は、世界を震撼させた2つの事件が起こった。一つは天安門事件である。天安門事件は何だったのだろうか?中国は、日本人にとってただの隣国ではない。漢字、漢詩、漢文、仏教、茶道、鑑真和上、隠元、水滸伝、三国志・・・、日本は、中国から多くを学び、その上に独自の文化を創造して来た。日本の精神文化は、中国の精神文化と密接に連なっており、何千年の歴史を俯瞰し、その上に生き延びる道標を構築していかなければならないと思う。
私が学生だった頃、1966年から毛沢東が亡くなる1976年までの10年間、中国は、毛沢東夫人・江西ら4人組が主導権を握り、赤い毛沢東語録を持った学生や市民が、走資派実権派を糾弾殺害する文化大革命/紅衛兵運動が起こっていた。数百万人が命を奪われたと言われている。天安門事件が起こったのは、その10年以上後の1989年、政治改革を進めていた胡耀邦が亡くなったことをきっかけに「もっと自由を」「腐敗を撲滅しよう」と学生達数万人が天安門広場に集まり、民主化を求める全国的な運動が起こっていた。
これに対し、鄧小平、李鵬を中心とする中国共産党は、戦車を差し向け、曳き殺し、銃を乱射し、一万人以上を虐殺したのである。天安門広場で戦車に立ち向かった学生の姿は特に衝撃的だった。毛沢東の文化大革命とその後の天安門事件は、奇しくも、社会主義革命後の、権力の専制、経済の破綻、社会矛盾の爆発が、共産党指導部、国家情報局、秘密諜報機関、公安警察による粛清、処刑、迫害の悪魔のパラドックスを生み出したのである。
世界を震撼させたもう一つの事件はベルリンの壁の崩壊である。冷戦の終わりを予兆する世界史の転換点だった。マルクスの社会主義は、空想ではなく科学であると論じられて来た。しかし、現実は、個のベクトルとエネルギーが封殺され、国家全体が均一のユニットになって行く。生産者が一人の例外もなく、同じ熱量で生産活動に従事する訳ではない、働かない者も出て来る。生産性は低下し、必然的に経済が行き詰まり、秘密警察が暗躍し、専制独裁が生まれる。

日本の江戸時代、260年間続いた徳川独裁政権は、国家を封鎖(鎖国)し、柳生を始めとする秘密諜報機関と譜代大名の軍事力で、反徳川の軍事力を弱体化させ、参勤交代で経済を疲弊させ、サムライが農民や商人を奴隷のようにこき使い政権を維持して来た。しかし、世界は植民地を求め、ハイエナのように黄金の国・ジパングに狙いを定め軍事侵攻を企んで来た。長州や薩摩が列強に立ち向かったが木端微塵に粉砕された。国を閉鎖して来た徳川独裁では立ち向かえないことが鮮明になり、大政が奉還され、戊辰戦争が勃発し、徳川独裁政権が倒れた。
明治維新―文明開化というイノベーションが起った。国家戦略として富国強兵が叫ばれ、日清、日露戦争を経て、満州事変、傀儡満州国建国、日中戦争、太平洋戦争へと突き進んでいったのである。
そもそも、人類を含めた全ての生物は、水が無ければ死ぬ。空気がなくても死ぬ!食料がなくても死ぬ。それが種の生存原理である。だから水・食料争奪戦は永遠に終わることはない。近年は、ここに空気の汚染、温暖化が地球環境を破壊し始め、種の存続を脅かす最大要因になって来た。
25万年前、我々ホモ・サピエンスが世界を制して以降、人類は石器、槍、弓、銃器を開発し食料争奪戦に勝利し地球生態系を支配して来た。以降、戦車、戦艦、潜水艦、戦闘機、核兵器、スターリンク、超高感度宇宙カメラ、極超音速ミサイル、ドローン、兵隊ロボット、無人戦車、長距離原子力魚雷によって、いつでも不都合な敵を惨殺し、領土領海を強奪出来るまでになってしまった。核兵器を持つた狂った独裁者が人類を滅ぼす悪魔の武器を持っているのである。何故人間はノーサイド・戦闘中止が出来ないのだろうか。何故、毎日が殺し合いより、毎日が日曜日を選ばないのだろうか。そもそも人類社会において公正、公平な社会は可能なのだろうか。利己から抜け出せない人間社会では成り立たないのではないか。
ジョンレノンのノーポゼッション、ノーカントリー、ノーヘブンは、実現可能なのだろうか。イエスキリストのように、他人のために自ら十字架に掛る人がどれ程いるだろう。自利利他を完璧に実行出来る人は何人いるだろうか。
生産力は、個々人の生命エネルギーの熱量と密接に関係している。生命エネルギーが低ければ、生産力は低下し、そもそも剰余価値が生み出されない。必然的に経済は立ち行かなくなる。 世界の経済は、理論とは別に、中国、ロシアを含め資本主義の経済原理で動いている。資本主義は、必然的に富める者と貧困層の格差を生み、少数の巨大資本が富を独占し、圧倒的多数が貧困に喘いでいる。対立と分断はますます加速し、戦争の火種は、永遠に続いていく。アメリカが自国ファースト:ドンロー主義で世界を振り回し、EUが存続危機事態に陥り、中国、北朝鮮が元気付き、インドネシアを始めASEAN諸国が中国に接近している。
今こそ、日本のリーダーシップが求められている。しかし、日本にはそうしたリーダーがいない。国連は補助的な役割しか担えない。軍事力に軍事力で対峙する軍事均衡平和論は、ボタンをかけ間違えただけで種の絶滅に直結する。戦争は無辜の死者を量産し、憎悪の連鎖を拡大再生産する。軍事対軍事の対立は、報復の連鎖を生むだけで平和を遠ざける。これが歴史の真実である。どんなに困難であっても、軍事ではなく、非軍事非暴力の力で種の存続を図らなければならないのである。
前巻・未完の自伝では触れなかったが、私は、28歳で父の会社に入り、30代の半ばまで代表権を持たない専務として経営の指揮を執っていた。裁判が続いていたが、2審の高裁で、謀議があったとされた日の私のアリバイが証明された。無罪判決かと思われたが有罪。最高裁に上告した。
暫くして、弁護人から連絡が入った。「大法廷で審理されることになった、大法廷で審理されるということは、無罪の可能性が出て来たということだ」、病気療養中だった入院中の父のところに飛んで行った。「弁護人から、無罪の可能性が出て来たと連絡が来た」
最高裁でもアリバイは認められた。私が北朝鮮路線に反対だったことも認められた。しかし「知っていたであろうと推測される。」として有罪、投獄された。「知っていたであろうという推測」だけで共謀共同正犯、反対意見を言っていても共謀共同正犯、日本の司法はどうなっているのか。国家に盾突いた者は、アリバイがあろうが、犯罪構成要件に反対していようが、かまわず社会から抹殺隔離したのである。これまで何人かの親しい弁護士が、再審請求をやろうと言ってくれている。それもやってみたいとも思う。免田事件、袴田事件のような刑事事件であれば、再審無罪の可能性もある。実際、長い裁判の末、無罪を勝ち取ることも出来た。
しかし、私のような国家の横暴に立ち向かった政治事件では、国家の意思を無視した判決が出ることは不可能なのではないか。1959年の「在日米軍の駐留は憲法9条に違反する」とした伊達判決が、今の世の中で出るとは思えない。3権分立は建前であり、司法は時の政治権力におもねる判決しか出せない。民主主義の仮面を被っていても、権力の座を脅かす存在は排除する。これが、権力の方程式である。
弊社は2年後100周年を迎える。私が父の会社を継いで50年、考えたこともなかったが、100年のうち半分を私が担って来たことになる。なりふり構わず、誰も踏み込んだことのない道を切り開いて来たが、残りはあと僅かである。ラストスパートを掛け、全力疾走で駆け抜けなければならない。どこまで出来るか。ダ・ヴィンチのモナリザは何を訴えようとしているのか?ピカソのゲルニカは何を伝えようとしているのか?いつの日か、殺戮細胞を持たない新生人類・喜望のサピエンスが生まれて来るだろうか?
プロローグを終えるに当たり、サミュエル・ウルマンの「青春」を紹介したいと思う。サミュエル・ウルマンは1840年にドイツで生まれ、11歳の頃、家族でアメリカに移住し、「黒人にも白人と同様に教育を受けさせるべきである」と黒人教育の必要性を説いた。後のマーチン・ルーサー・キング牧師の公民権運動の先駆者でもある。病院の設立など、公共の福祉分野にも多くの功績を残した。
TBS日曜劇場「VIVANT」で、役所広司の演じるテロ組織と言われているテントが、孤児院をつくるために闘っていることは重大なメッセージと思う。テロではなく孤児院をつくっているのである。
青春

青春とは人生のある期間を言うのではなく心の様相を言うのだ。優れた創造力、逞しき意志、炎ゆる情熱、怯懦を避ける勇猛心、安易を振り捨てる冒険心、こういう様相を青春と言うのだ。
年を重ねただけで人は老いない。理想を失うときに初めて老いが来る。歳月は皮膚のしわを増す、情熱を失う時に精神はくぼむ。苦悶や狐疑や、不安、恐怖、失望、こういうものこそ恰も長年月の如く人を負いさせ、精気ある魂をも芥に帰せしめてしまう。
年は七十であろうと十六であろうと、その胸中に抱き得るものは何か。いわく、驚異への愛慕心、空にきらめく星辰、その輝きにも似たる事物や思想に対する欽仰、事に対する剛毅な挑戦、小児の如く求めて止まぬ探求心、人生への歓喜と興味。人は信念と共に若く、疑惑と共に老ゆる。人は自信と共に若く、恐怖と共に老ゆる。希望ある限り若く、失望と共に老い朽ちる。大地より、神より、人より、美と喜悦、勇気と壮大、そして威力の霊感を受ける限り人の若さは失われない。
これらに霊感が絶え、悲嘆の白雪が人の心の奥底までも覆い尽くし、皮肉の厚氷が、これを堅く閉ざすに至れば、この時こそ人は全く老いて、神の憐れみを乞う他なくなる。
世界終末時計
| 1947年 | 7分前 | 第二次世界大戦終結 |
| 1963年 | 12分前 | 米ソが部分的核実験禁止条約に調印 |
| 1968年 | 7分前 | 1964年までに英国、フランス、中華人民共和国も核実験に成功。 ベトナム戦争が激化。第三次中東戦争、第二次印パ 戦争が発生 |
| 1972年 | 12分前 | 米ソの第一次戦略兵器制限交渉(SALT I) 弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)締結 |
| 1989年 | 10分前 | 天安門事件、ベルリンの壁崩壊、冷戦終結 |
| 1990年 | 10分前 | ソビエト連邦の崩壊。ユーゴスラビア連邦解体 |
| 1991年 | 17分前 | バラク・オバマ米国大統領による核廃絶運動 |
| 2010年 | 66分前 | 福島第一原子力発電所事故を背景とした原子力安全性への懸念 |
| 2015年 | 3分前 | ドナルド・トランプ米国大統領が核廃絶や気候変動対策に対して 消極的な発言。初となる秒単位での時計の推移 |
| 2022年 | 2分30秒前 | ロシアのウクライナ侵攻における核戦争のリスク増加 |
| 2026年 | 1分25秒前 | イスラエル、アメリカによるイラン攻撃、ホルムズ海峡封鎖 |
資料出所:米国「原子力科学者会議」

| ■ 第1期 プロローグ はじめに |
| ■ 第1期 シーズン1:1947年 敗戦、帰還船、ビルマの竪琴 |
| ■ 第1期 シーズン2:1960年 60年安保、チボー家の人々 |
| ■ 第1期 シーズン3:1962年 松本深志高校、剣道、キューバ危機、宿題がマルクス、「渚にて」強行上映 |
| ■ 第1期 シーズン4:1965年 青雲の志 中央大学 学生運動 |
| ■ 第1期 シーズン5:1966年 自治会委員長、全中闘委員長、全国初学生単独管理学生会館要求バリスト |
| ■ 第1期 シーズン6:1967年 佐藤首相ベトナム訪問阻止羽田空港突入!中大学費値上げ白紙撤回バリスト |
| ■ 第1期 シーズン7:1968年 新東京国際空港:成田は経済効率最悪/豊穣農地破壊! 東京湾上に作れ! 成田空港公団突入総指揮/逮捕、防衛庁突入総指揮/逮捕 |
| ■ 第1期 シーズン8:1969年 6月保釈出所、7月共産主義者同盟分裂:赤軍派を除名 7月共産主義者同盟学対部長、9月共産主義者同盟離脱/赤軍派に合流 11月武装蜂起部隊全員逮捕、主力部隊壊滅 |
| ■ 第1期 シーズン9:1970年 1月中央人民組織委員会委員長、基盤人材獲得全国長征/長征軍隊長 2月政治局北朝鮮方針に反対 反対派多数戦線離脱、3月15日最後の逮捕 |
| ■ 第1期 シーズン10:1970年 3月31日よど号ハイジャック発生! 逮捕、「不起訴の約束」は反故、起訴、投獄 |
| ■ 第1期 シーズン11:1971年 獄中への一通の手紙 |
| ■ 第1期 シーズン12:1984年 最高裁で謀議当日のアリバイが証明された。しかし判決は有罪、下獄 監獄改革、獄中の狂詩曲 |
| ■ 第1期 シーズン13:1989年 早期仮釈放嘆願10万人署名/仮釈放内示、大韓航空機爆破事件(金賢姫)発生 仮釈放取消、プリズン留学12年満期出所、松本帰還 |
| ■ 第1期 エピローグ |