自動車産業の地殻変動が加速しています。第4次産業革命、インダストリー4.0とも言われる歴史的 大変動と同期しています。第一次産業革命は、18世紀末の水力、蒸気機関による工場の機械化でした。第二次産業革命は、20世紀初頭の電力による大量生産。第三次産業革命は、1970年代からの電子工学、情報技術を用いたオートメーションでした。
そして、2000年代に入って始まった第4次産業 革命は、AI、ビッグデータ、5G、クラウド、VR、ロボット等、世界のパワーバランスをも激変させるような異次元の革命として起こっています。
今回のプーチン戦争で、何故ウクライナは負けていないのでしょうか?
戦争のやり方や国家の防衛のやり方までもが変わって来ているのです。ウクライナと同じように、我々も生き続けなければなりません。人間の本質は変わっていませんが、今までの常識的価値観では生き残ることが出来ない時代に入っているのです。
言い換えれば、勝敗は規模や力ではなく、お客様やマーケットが求める事業価値を見極め、魂を揺さぶるミッションと希望に繋がるビジョンを提示し、不撓の志と実行力を持つトップとタスクフォースがいるかどうかで決まるのです。
自動車が誕生したのは1769年。フランス革命の20年前、今からおよそ250年前のことです。
フランス人の、ニコラ・ジョセフ・キュニョーが、蒸気で走る自動車を発明しました。
この初めての自動車は、皮肉にも、戦場で大砲を運搬するために造られたもので、スピードも 10km/h以下だったそうです。
次いで登場したのが電気自動車でした。電池は1777年、モーターは1823年に発明され、1873年にイギリスで電気式四輪トラックが実用化されました。蒸気自動車から約100年後のことです。1899年にはフランスでジャメ・コンタント号が発売されています。
ガソリン自動車が誕生するのは、電気自動車からおよそ10年、1885~1886年。1885年、ドイツ人のゴットリープ・ダイムラーが 4ストロークエンジンを開発し、二輪車の試走に成功し、翌1886年に四輪車を開発しています。同じ1886年、同じくドイツ人のカール・ベンツがガソリンエンジンの三輪車を完成させました。ダイムラーでもベンツでも出来なかった点火装置をBOSCHが開発して可能になりました。
自動車が大衆化した象徴が、1908年に登場したT型フォードです。アメリカ人のヘンリー・フォードが1903年にフォード・モーターを設立し開発されたクルマです。簡素な構造で、運転も容易なこのクルマは、生産が終了した1927年までに、総生産台数は1500万7033台に達しました。
一方、日本では、1907年(明治40年)、国産初のガソリン車が誕生しました。オートモビル商会の吉田 真太郎と機械技術者の内山駒之助が、10台ほどのガソリン車自動車をつくりました。
当時、人々は、この車がガタクリ走ることから“タクリー号”と呼んでいたとのエピソードが残っています。
第二次大戦の時代になると、ドイツではアドルフ・ヒットラーが “国民車構想”を提唱し、1938年フォ ルクスワーゲン・ビートルが誕生します。このクルマはポルシェ社の創設者フェルディナント・ポルシェの手により開発されました。
1939年に第二次世界大戦が勃発したため、戦時中は生産されませんでしたが、戦後に量産化が開始されると、長期にわたり世界中で販売され、累計2000万台以上の生産台数を達成し、ドイツの国民車というだけでなく、世界的な大衆車となりました。
一方、ドイツのポーランド侵攻時のキューベルワーゲンの活躍に注目したアメリカ軍は1941年に小型四輪駆動車Jeep(ジープ)を開発し、連合国の軍用車両として60万台ものジープが生産されました。戦後は、世界中でノックダウン生産され、膨大な数のジープが走っていました。三菱ジープもその一つです。
日本の自動車産業は、1932年(昭和7年)に日産自動車の前身となる“ダットサン商会”が、翌1933年(昭和8年)にはトヨタ自動車の前身となる“豊田自動織機製作所自動車部”が設立され、現在の日産自動車、トヨタ自動車が誕生しました。
因みに弊社の創業は1928年、ダットサン商会よりもトヨタ自動織機よりも早かったのです。国産車が未だない時代に、松本―上高地間のバス、タクシー、運送業を起業していた事実に、改めて先見力と突出した起業家精神を感じます。
弊社は今年で創業95年。CASE、MaaS、ADAS、ADの激震に直面しています。
国土交通省は、1991年、先進安全自動車(ASV計画)を策定し、以下などを推進してきました。
1 衝突軽減ブレーキ
2 クルーズコントロール
3 レーンキープアシスト
4 踏み間違い防止装置
先進安全自動車(ASV)の基幹技術がADAS(先進運転支援システム)です。
カメラ、レーダー、ライダー、センサー、GPS、ECU等の電子制御装置によって安全運転を担保しようとするもので、この技術がAD(自動運転)に進化していきます。ADAS/ADは、間違いなくこれからのモビリティのプラットフォームになると思います。
更にもう一つ大きな問題があります。サイバーセキュリティ(CS)です。
クルマは「走る情報端末」とも言われ、サイバーリスクに晒されながら走っています。
もし、サイバーテロを考える不届き者が、ブレーキやステアリングをいきなり制御不能にしたり、原発に向かって突進させる等の操作をしたら人類は絶滅するか、 最低でもクルマ業界は消滅します。
モビリティチェンジ/ADAS/AD/CS時代の到来を受け、2020年4月、国交省は、電子制御装置整備を新たな整備項目として追加し特定整備制度をスタートさせました。
カメラ、レーダー、ライダー、センサー、ECU等電子制御装置が故障していたり、誤作動を起こしたら重大な事故が発生します。そのための整備が、電子制御装置整備であり、その作業がエーミング (校正・調整)になります。
今後更に、レベル3以上の自動運転車が、続々と発売されて来ると、より高度な電子制御装置整備が求められ、整備事業者にとって、コストと技術の負担が発生し、人手が足りないことも相まって、電子制御装置整備の確実な実施が困難になることが予測されます。ここに新しい市場が生まれます。
一方、脱炭素、脱化石燃料へのエネルギー転換が急速に進行し、EV、FCV、水素自動車への転換が予想以上のスピードで進行していきます。2022年1月5日、ソニーが新会社:ソニーモビリティを設立しEVに本格参入するというニュースは、時代の転換を象徴するニュースだと思います。既に10月には、ソニー・ホンダモビリティ株式会社が設立され2025年にソニー・ホンダ第1号が発売されるところまで来ています。
これからは、これまでの飯の種であるエンジン系部品、点火系部品、冷却系部品、マフラー等排気系部品の整備需要は、徐々に減少して行きます。
弊社は、約20年前から、こうなることを予測し、エンジンが無くなっても需要が無くならないタイヤ・アルミホイール、バッテリー、ブレーキ、足回り部品のマーケットを果敢に開拓し、併せてタイヤに次ぐ市場規模を持つエンジンオイルにも多くのエネルギーを注いで来ました。
同じことがサービス部門にも当てはまります。噴射ポンプ、パワステ等油圧整備事業は限りなくゼロに近づいており、エアドライヤー事業がいつまで現在の水準で続くかも不透明です。
しかし、ADAS/AD/CSによる電子制御装置整備という新しい市場が生まれて来ます。しかも、クルマが仮に全てEV、FCVになっても半永久的に存続する持続可能な市場です。ADAS/AD/CS による電子制御装置整備こそが、激変するモビリティチェンジの時代に対応する次世代ビジネスモデ ルであると考えるに至りました。
既に、BOSCHやオーテル等も技術協賛するネットワーク:日本技能研修機構(JATTO)=エーミングジャパンの会員にもなり、松本周辺半径15kmの独占事業権も取得しました。
2023年、軽自動車から大型車まで、国産車から輸入車までフルカバーする特定整備認証工場を建設し、次世代の基幹事業にしていきたいと考えています。整備事業の未来戦略 であると同時に部品事業の未来戦略であり、持続可能な次世代のビジネスモデルです。オール上高地の基幹戦略として全力推進します。