私の名前はアメイジング・ジャッカル、不正や不条理、理不尽を撲滅することを仕事としている。不正がまかり通り、弱者が放置される世の中が許せないからである。職業は弁護士でも政治家でも学者でもない。会社経営の仕事はしているが、人を紡ぎ、慈しみ、アメイジングに生きるよう煽ったり、人類史のゲームチェンジを画策鼓舞している
ただ、絶望と悲嘆を知っているので、時折、ドン・キホーテのような奇怪な行動をしたり、奇想天外なストーリーを喚きたてている。本音でモノを言う習性があるので、若い頃は、ソクラテス過激派とか、ゴルゴ13とか言われていたが、最近ではアメイジング・ジャッカルと呼ばれるようになった。不正や理不尽を暴き出し、窮民や難民を支える頼もしい男という意味で言われているらしい。常に世界の在り様を問い、希望の種を探し、不条理をジャッカルするために生きているからである。
年齢は53歳。最新の解析コンピューターが弾き出した私の年齢である。戸籍年齢は単に足し算しただけの意味のない数値であるが、解析コンピューターは、ボディエナジーや免疫力、戦略策定力、人間求心力、人間共振力等を総合的に判断して評点を算出する。進むべき羅針盤を持ってワンダーな生き方を貫いていることが年を取らない最大の秘訣らしい。彼女がいないことが、エネルギーを更に増幅しているとも言われ、貴重な研究材料にもされているらしい。
とは言っても、心肺を酷使した累計年数は戸籍年齢と一致するので、毎日が余命24時間のつもりで生きている。私は若い頃2回も殺されかかったことがあるので、365毎日が余命24時間! 毎日がジャッカル・ブレイクスルー!で生きている。
※ジャッカルとは、ラグビーのプレイ用語の一つ。タックルで倒れた選手からボールを奪うこと。倒れた選手が味方にボールを繋げようとする前に行わないといけないため、相手を圧倒する破壊力と瞬間の判断力が求められる。ジャッカルブレイクスルーとは、悩みや重荷をジャッカルして幸せを掴もうという意味で用いられる。
そのため、私は、諜報機関に目を付けられるような危険なことも毎日のように口走っている。だから、どこにいるか誰にも判らないようにしている。イスタンブールの裏通りでカルメンと飲んでいたとか、南太平洋のタヒチでメーテルとカヤックに乗っていたとか、最新情報ではマチュピチュにいたという情報まである。
インカ道をマチュピチュからクスコまで歩き、リマで特殊装備した帆船に乗り込み、イースター、タヒチ、オークランド、タスマニア、シドニー、ジャカルタ、コタキナバル、エルニド、マニラ、ハノイ、バンコック、シンガポールを寄港しカルカッタまで。風力、太陽光、海水分解水素燃料電池の自然エネルギーだけで航海すると言っているらしい。
ダイバーシティ/エクイティ/エンパシー/インクルージョンの旗を押し立て、世界196ヶ国の国歌をエンドレスで演奏して太平洋横断クルーズをやると言う。航海中は、最新のナノチューブ技術で海水を高速で淡水化して飲料水とし、同時に100kmごとに光合成ドローンクラウドを打ち上げ、カルカッタを目指すと言う。光合成ドローンクラウドは、大気圏内の炭酸ガスを減らし酸素を増殖し、CO2濃度を劇的に削減する。カルカッタは、ガンジーが断食し、マザーテレサが学校や孤児院を開設し、貧困や疫病と戦った聖地だからである。船の名前はイスカンダル。艦長は勿論、アメイジング・ジャッカルである。
日本の北アルプス山麓の隠れ家に居るという情報もある。マッカランを飲みながら森の鶯とデュエットしたり、バルコニーで猿と鉄板焼きステーキをやっているとか、温泉に浸りながら、バッハやアルビノーニ、テレマン、リスト、ショパン、ラフマニノフ、チャイコフスキーやジャズを聴いているとか。駅前の居酒屋では、世界で起こっている政治や戦争、歴史について捲くし立てているという情報もある。
元カノはクレオパトラだとか、第3次世界大戦は、もう始まっているとか、マハトマガンジー、チェゲバラ、ネルソンマンデラ、マザーテレサ、緒方貞子、中村 哲医師についても捲くし立てていると言う。
光合成クラウドや放射能除去ドローンを大気圏内に無数に打ち上げろとか、放射能無力化ウィルスを開発して拡散させろとか、人類の遺伝子をX細胞で書き換えろとか、宇宙戦艦ガンジーが地球を救うために火星を飛び立って地球に向かっているとか喚いているらしい。それらはすべて、道を創らなければ人類が滅びる分岐点にあるからである。
私の原点にマハトマガンジーという存在がある。ガンジーの塩の行進は、私を強く動かした。そしてサティアグラハ(真理の把持)は、私のアイデンティティになっている。アパルトヘイト撤廃の武装闘争を率い、国家反逆罪で終身刑となって投獄されていたネルソンマンデラも、獄中でガンジーと出会い、アパルトヘイト撤廃を実現した。終身刑が免除され、釈放されて大統領にもなった。
マーチンルーサーキングの 演説「I have a dream(私には夢がある)」は、今でも胸を躍らせる。ジョンレノンがイマジンで歌ったノーヘブン、ノーカントリー、ノーポゼッションも希望を感じさせた。しかし、天国も国家も無くならなかった。所有という魔性の欲望はむしろ破壊的に増幅しているようにさえ見える。現代は、更に核の狂気が席巻している。ガンジーが生きていても、核の狂気を止めることは不可能のように思える。
不条理も理不尽も全く変わっていない。悲嘆に苦しんでいる人々の数は、ますます増えている。出口はどこにあるのか? 見つけるのは容易ではない。だから人間はサムシンググレイトを求め、どんなに科学が発達しても神を求める。そこに宗教が存在する根拠があり、聖書が2000年、コーランが1400年以上生き続けている理由がある。宗教の歴史が人類の歴史であるとさえ言える人間の事情が、そこにはある。だから、天国は無くならない。文明も言語も奪えない、だから国家も無くならない。
生命活動を維持するには空気、水、食料、エネルギーが不可欠である。アダムとイブ以来、そうした資源の争奪を巡る民族、国家の存亡を懸けた戦いが途切れることなく続いて来た。人口が増え続けるこれからの時代は、この生命維持ライフラインの争奪戦が、これまで以上に増幅することが予測される。月や火星、宇宙空間の所有権争奪戦を見ていると、黙示録の前夜に立たされているようにさえ思える。もしかしたら今日が最後かもしれない。
遺伝子学が画期的な細胞生成メカニズムを発見し、人類のDNAを変えることが出来ればと思っているが、仮にDNAを変異させることが出来ても、生命維持と不可分な所有は絶滅しないだろう。昔、無所有の勉強会にも参加していたことがあった。しかし、無所有は生命が維持できない環境では成り立たない。生命維持の戦いに勝たなければ死滅してしまうからである。戦争なしに共存できる魔法の知恵が求められているのである。
ラグビーの基本精神にワンフォーオール・オールフォーワンがある。一人はみんなのために、みんなは一人のために! そして究極のノーサイド:戦闘中止!ヨハネ黙示録のオメガである。
これは互助会、協同組合そして社会主義の原理でもある。しかし、人類は、何千年経っても殺し合いを続けている。どうすれば、世界がノーサイドになるだろうか? どうすれば、核兵器を地球外共同墓地に埋葬し、幸せ開発目標を共有し、地球サンクチュアリを実現できるのだろうか?
不条理をジャッカルする。この一点で私は生きて来た。種を紡ぎ、生命を繋ぎ、水と塩、食糧とエネルギーの世界回廊をつくり、ダイバーシティ/エクイティ/エンパシー/インクルージョンを人類の最終到達価値として実現し、人類のターンブレイク/サスティナブルピースを願い最後の時間と戦っている。
(つづく)
■ プロローグ はじめに |
■ シーズン1:1947年 敗戦、帰還船、ビルマの竪琴 |
■ シーズン2:1960年 60年安保、チボー家の人々 |
■ シーズン3:1962年 松本深志高校、剣道、キューバ危機、宿題がマルクス、「渚にて」強行上映 |
■ シーズン4:1965年 青雲の志 中央大学 学生運動 |
■ シーズン5:1966年 自治会委員長、全中闘委員長 全国初学生自主管理学生会館要求バリスト |
■ シーズン6:1967年 佐藤首相ベトナム訪問阻止羽田空港突入! 中大学費値上げ白紙撤回バリスト |
■ シーズン7:1968年 新東京国際空港:成田は農地破壊/利便性最悪、新東京空港は東京湾上に作れ! 成田空港公団突入総指揮、逮捕 ベトナム戦争加担前線司令部・防衛庁突入総指揮、逮捕 |
■ シーズン8:1969年 6月保釈出所、7月赤軍派分裂、共産主義者同盟学生最高責任者(学対部長) 9月共産主義者同盟離脱、赤軍派へ、11月武装蜂起部隊全員逮捕 |
■ シーズン9:1970年 1月中央人民組織委員会委員長、全国長征:長征軍隊長 2月政治局北朝鮮方針に反対、北朝鮮反対派多数戦線離脱 3月15日別件逮捕 |
■ シーズン10:1970年 3月31日ハイジャック発生!黒幕?として起訴 1984年 最高裁で謀議当日のアリバイが証明されるも判決は有罪 |
■ シーズン11:1970年 ~獄中への一通の手紙と監獄改革 |
■ シーズン12:1987年 早期仮釈放嘆願10万人署名、仮釈放内示 大韓航空機爆破(金賢姫)事件発生、仮釈放取消 |
■ シーズン13:1989年 プリズン留学12年、満期出所 友人たちがバスで出迎え松本帰還 |
■ エピローグ |